美味しい栗探し


2005年 美味しい栗選び

新しく栗の苗を植えるとしたらどの品種を選んだらいいのだろう。調べると、栗には100品種以上ありました。どうせ植えるなら、味がいいのが一番と考えて、味比べを家族でしました。

同じ条件で、蒸した栗を品s乳名を伏せて、皿の上に置き、「甘み」「香り」「渋み」「ホコホコ感」と評価項目を決め、5点満点で点数をつけました。更に、病気や害虫への強さ、収穫時期を加味して選んだ栗は、次の通りです。

「林甘栗」「ぽろたん」「丹沢」「金華」「筑波」「利平栗」「石鎚」「霜かつぎ」「有磨」「美玖里」「胞衣3号」「巫女」です。

後に、「倉方甘栗」「えな宝来」が加わりました。


2009年 事件「その焼き栗は不味いから止めておき」と言われ

焼き釜を密封し、5気圧まで圧力を上げて、焼き上げます。栗農家はたくさんありますが、焼き栗をしている農家は、周囲にはいません。何度で焼いたらいいのか、圧力は徐々にかけるのか、一気にかけるのか、分からないことばかりです。条件を変え、最上の焼き上がりを探しました。何十回と焼きました。

ようやく、これはという焼き栗が出来たので、農協の直売場にもって行った所、買う人は少ないのです。店頭に並べているとお客様の話し声が聞こえてきました。「その焼き栗は不味いから買わない方がいい」と。


2009年 ドーピング

日本栗は、中国栗に比べて、糖度が低く、焼いても美味しくないのです。不味いのです。

何とかいい方法がないものか、そればかりを考えていました。丁度、仕事の関係で札幌に行き、東急ハンズに行くと注射器が売ってあります。これだと思いました。注射器とオリゴ糖を買って帰り、焼き上げた栗に注射しました。食べるとほのかな甘みがあり、中国栗に負けていません。

でも、その注射器を使ったのは家族で試食した一回だけです。なんだかインチキ臭く、後ろめたいのです。

(現在の焼き栗業界では、砂糖水の中に栗を入れ、圧力をかけて砂糖水を染みこませ、焼き上げるという例がたくさんあります。私が考えたことは既に先例があったようです。)


2009年 まったく偶然みつけた記事

「現代農業別冊」(2008年4月号)という雑誌に、栗の冷蔵保管の方法についての先進栗農家(小仲教示氏)が書いた記事がありました。その中で、「栗を冷蔵すると甘くなる」という一文が目に飛び込んできました。記事を何度も読み返しました。記事が頭に焼き付きました。

私が探し求めていたことはこれだ!!

だけど、本当に冷蔵すると甘くなるのだろうか?

どれぐらい甘くなるのだろうか?

何度で保存したらいいのだろうか?

分からないことばかりです。そこから栗の冷蔵と品質に関する研究論文探しが始まりました。


「氷温協会」との出会い

周りにはそのことを知っている人、取り組んでいる人は誰もいません。私が最初に連絡をとったのは、「氷温協会」です。注目し、商品化に取り組んでいる組織です。

「栗は冷蔵すると甘くなるのですか。」

「栗の糖度が上がった研究論文はありますか。」

ということを電話、メールでたずねました。送っていただいた論文では確かに、栗の糖度は上がっています。我が家の栗の糖度も測って頂きましたが、品種別に9度、10度、11度でした。

冷蔵には特殊な構造が必要なようでした。そういう業者は周りにはいません。氷温協会が推薦して下さったのは、和歌山県の業者でした。


原理「栗を冷蔵すると、なぜ甘くなるか」

「雪の下から掘り出した野菜は甘い。」ということは昔からよく知られていることです。野菜が寒さに対応するため凍結点を下げるためだと言われています。栗も同様で、氷点下で貯蔵するとデンプンが糖に変化し、甘くなるのです。

私はそれまで知らなかったのですが、ずいぶん前から研究者の仲では知られている事実で、研究論文もたくさんありました。

 

低温貯蔵中における生栗の品質変化www.jstage.jst.go.jp/article/jafps1987/13/1/13.../_pdf

クリの低温貯蔵に関する研究

www.pref.ibaraki.jp/.../enken/.../hiiac161-112008.pdf


2010年10月 特別設計の冷蔵庫導入

待ちに待った冷蔵庫(氷温庫)が完成したのは、秋も半ばを過ぎた10月でした。早速、氷温庫に、栗のサンプルを入れ、3粒ずつ取り出し、磨りつぶして糖度の測定を始めました。最初はあまり変化がありませんでしたが、ジリジリと糖度が上がり始めました。ついに、27度に達しました。これで焼き栗を作ったらとっても甘くて美味しい。

「スイート中津川栗あまろん」の誕生です。

 

 


2016年11月5日 「人生の楽園」に登場

糖度23.2度

嬉しかったなあ!!糖度23.2度。

これは、「人生の楽園」(テレビ朝日)での一場面です。私が、テレビカメラの前で、栗の糖度を測定しているところで出た数値です。

テレビカメラの前でも実証できたことは、最高の喜びでした。